文字サイズを変える
小中大

健康講座

健康講座一覧へ戻る

食物繊維は、“食べ物のカス”ではなく、便秘改善、肥満防止、血糖値上昇抑制など健康のために欠かせないもの。 〜現代人に摂りにくい食物繊維をサプリメントで補おう〜

元気アップ講座(パトス vol 72)

朝のトイレでするっと便がすっきり出ると、お腹もすっきり、気分もすっきり。心身ともに元気に過ごせます。
現代人の多くは便秘がち。たかが便秘と放っておいてはいけません。腸の中に便が長く留まると、便の有害物が腸から体内に吸収されて体にさまざまな悪影響が。肌荒れ、吹き出物、口臭、お腹の張り、むくみ、肩凝り、不眠、イライラなどの原因になるだけでなく、大腸ガンのリスクが高くなるともいわれます。便秘の改善には食物繊維が欠かせません。
現代人の多くは食物繊維が不足しがち。特に、腸管の働きが衰えてきた60歳代以上の人、メタボ対策でダイエットをしている人、歯が悪くて軟らかいものしか食べられない人、年をとって食が細くなってきた人などは、食物繊維をサプリメントで補うといいでしょう。

岐阜大学教授
農学博士 早川 享志 先生

「食物繊維の健康への有用性について」

食物繊維やレジスタントスターチなど人間の消化酵素で消化されない有用な食物中の難消化性成分を「ルミナコイド」という。
食物繊維の働き

─食物繊維とは。

早川 大まかに言うと、私たち人間が食べても消化されない成分のこと。それが大腸に達して、最終的には便になります。食物繊維の定義は、ヨーロッパなどでは「植物の細胞壁を構成する多糖類とリグニン」とされていますが、最近、日本では「人の消化酵素で消化されない食物中の難消化性成分の総体」としています。

―難消化性成分というのは。

早川 植物の細胞壁以外にも、例えば、カニやエビなど甲殻類に含まれるキチン、キトサンといった人間の消化酵素で消化されない動物性食品もあります。また、難消化性デンプン、これをレジスタントスターチといいますが、消化されにくいデンプンもあります。植物に含まれるセルロースやペクチン、甲殻類に含まれるキチンやキトサン、そしてオリゴ糖やレジスタントスターチなどを総括して、日本食物繊維学会では「ルミナコイド」という言葉を用いています。

―ルミナコイドとは聞き慣れない言葉ですが。

早川 消化管の中で作用する有用成分といった意味合いの造語です。日本食物繊維学会が、小腸内で消化吸収されにくい食物中の成分で健康の維持、増進に役立つものをルミナコイドと呼び、この言葉を世界に広めようとしています。1990年代に入って研究が盛んになったレジスタントスターチは食物繊維というカテゴリーではありませんし、もう一つオリゴ糖も食物繊維ではありませんが食物繊維様の効果がある成分です。オリゴ糖は、厚生労働省が健康にいい成分と認めた特定保健用食品にもなっているものもあります。食物繊維ではなくても、同じような作用のある健康に重要な成分があるのです。

―レジスタントスターチはデンプンの一つということですから、米などに多く含まれるのですか。

早川 いいえ、日本の精米した米には少ないんです。パスタや玄米のほうが多い。米でもタイ米など長米には多く含まれています。豆類では、大豆には少なく、甘く煮て食べるような豆類、小豆や黒豆に多く含まれます。


現代人は炭水化物の摂取が減り、玄米ではなく精製した白米を食べるようになり、食物繊維の摂取は減っている。
グラフ・国民栄養調査(1人1日当たりg数)

―食物繊維などルミナコイドの現代人の摂取量は。

早川 国民栄養調査をみると、昔も今も摂取カロリーはほとんど変わっていませんが、脂肪の摂取量が増えている。脂肪のグラム当たりのカロリーは炭水化物の2倍強ですから、つまり、その分炭水化物が減っているんですね。それに、たとえ昔と同じ量の炭水化物を摂ったとしても、現代人の食物繊維の摂取量は減ってしまっています。それなぜかと言うと、精製したものを食べるようになっているからです。玄米と白米を比べると、玄米は食物繊維たっぷりでビタミン、ミネラルも豊富ですが、精米するとその大半が取り除かれます。皮とか、精製しない部分に食物繊維が多い。ゴボウやダイコンなど野菜や果物も皮に食物繊維や栄養素が多いので、できれば皮ごと食べたほうがいいんですね。精製した原料を使った加工食品は、体にいい成分を捨ててしまっているというわけです。昭和50年頃から炭水化物の摂取量は徐々に減っていて、精製された炭水化物源に含まれる食物繊維が減っているのですから、現代人はサプリメントで補わないと駄目でしょうね。もし、必要なだけの食物繊維を通常の食品から摂ろうとすると、エネルギー過剰になり肥満になる可能性が大きいですしね。それに、食物繊維が摂れていないということは、野菜や豆類が摂れていない。野菜や豆類が摂れていないということは、ビタミンやミネラルが摂れていない。目にいい成分であるルテインやカロチノイド、葉酸といった健康にいい成分も摂れていないということです。

―食物繊維を摂りすぎると、ビタミン、ミネラルの吸収を妨げると言われますが。

早川 確かに以前は食物繊維をたくさん摂るとビタミン、ミネラルの吸収が悪くなると言われていました。以前の実験では食物繊維を通常レベルの四倍近く加えて行なうため、便通が速くなるので、消化管に食べ物の滞留時間が短くなり、ビタミン、ミネラルの吸収が下がったと。けれど、ビタミン、ミネラルの吸収を妨げるほどの食物繊維を普段の食事で摂っている人はほとんどいません。水溶性食物繊維を摂ると、発酵作用で㏗が下がって、ミネラルの可溶化を促進します。

―食物繊維の摂りすぎの心配は。

早川 通常の食生活で摂りすぎるまで食物繊維を摂っていることは、まずないといっていいでしょう。以前、東京農業大学で助手をやっていたときに、どれくらい食物繊維を摂ったら、どれくらい便が出るかという学生を使った実験に関わったことがあります。10g〜50gと一週間毎に食物繊維摂取量を変え、特殊な便器で便の量を測りました。2回実験をやって、食物繊維を摂れば摂るほど便の量が増えるということがわかりました。たくさんの食物繊維を摂取する学生たちは毎日、丼にてんこ盛りのヒジキを食べ、宿舎に泊まり込んでと大変でしたが、食物繊維の摂り過ぎで体調を崩したといったことはありませんでした。食事からの食物繊維の摂りすぎはまずないので問題ありませんが、食物繊維の錠剤のサプリメントを水分を摂らず一回にどかっと過剰摂取するのは、腸の中で食物繊維が膨らんで詰まってしまうこともあるので注意すること。サプリメントで摂る場合は、水分を加えゼリー状にして摂るタイプのものにするか、錠剤ならいっぺんに摂るのではなく朝昼晩と分けてたっぷりの水分と一緒に摂りましょう。


便のカサを増やす不溶性食物繊維と便を柔らかくし出しやすくする水溶性食物繊維の両方を摂るのがベスト。
不溶性食物繊維と水溶性食物繊維

―食物繊維には不溶性と水溶性の二種類ありますが、それぞれ効果は異なるのですか。

早川 一般的に食物繊維を摂ると便のカサが増えるといいますよね。それは、不溶性の食物繊維で、水溶性を摂っても便のカサは増えません。では、水溶性食物繊維にはどのような効果があるかと言うと、大腸の中で微生物の餌になって、発酵を受け、そのことによって例えば短鎖脂肪酸、乳酸などの有機酸を作り、㏗を下げることにより大腸の中の環境を改善します。具体的に言うと、私たちの消化管の胆嚢から出る胆汁酸は一部有害なものに代謝されるのですが、㏗を下げることにより有害な胆汁酸が作られるのを防ぐのに役立ちます。それから、水溶性食物繊維は水をたくさん溜め込み膨らむので、胃以降消化管での糖の吸収を抑え、血糖値の上昇を緩やかにします。血糖値が上がるとインスリンが出てきますが、インスリンの分泌を下げ、膵臓の負担をなくします。それに、肥満の原因となる脂肪の合成を抑えます。

―便秘を改善するためには、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維のどちらを摂るといいですか。

早川 細めのバナナ2本分くらいの便が毎日出るのが理想です。便のカサを増やしたいなら不溶性食物繊維ですね。ラットの実験では、水溶性食物繊維を摂らせてもあまり糞の重量は変わらないんですが、糞の保水性が高まり、膨潤した感じになる。糞の絶体量は変わらなくても、糞を柔らかくして出しやすくするという効果があります。不溶性食物繊維で便の量を増やして、水溶性食物繊維で柔らかくし出しやすくする。不溶性と水溶性を両方摂るのがベストですね。


食物繊維の腸内環境を改善するものとしての研究を行なっている。現代人にはサプリメントでの摂取も必要だ。
表・食物繊維を多く含む代表的な栄養素

―私たちの普段の食生活では、不溶性と水溶性のどちらが摂取しにくいのでしょうか。

早川 不溶性のものは比較的摂りやすく、水溶性のものが摂りにくいですね。コンニャク(精粉)や海藻、里芋と水溶性食物繊維を多く含む食品をしっかり摂っている人は少なくなっていますから、サプリメントで補うことが必要でしょうね。

―積極的に食物繊維を摂るようにしたいと思います。

早川 食物繊維を多く含む食品は、固くてよく噛んで食べなければならないものが多いので、咀嚼回数が増すことになり、唾液の量が増えます。年配で歯を悪くして噛むと痛いという人は別ですが、よく咀嚼するということは、健康のためにも、生きる力を保つ上においても大切なことだと思います。

―早川先生は、食物繊維に関する研究をされるようになってどれくらいに。

早川 25年近くになります。食物繊維が注目されたのは1970年代。日本で研究が盛んになったのは1980年代からで、食物繊維を摂ると、便のカサが増えて便通がよくなり、大腸ガンのリスクを減らすいいものだと。1990年代になると、腸内細菌のエサになり、発酵されて有用物質を作ってくれるという二次的な産物に注目が集まりました。2000年代には、食物繊維を摂ると腸内細菌が増えるという健康に対する概念が特に注目されるようになりました。最近は、免疫に関係する研究も進められています。私は、腸内環境をよくするものという観点で研究をしています。

―食物繊維について大変勉強になりました。

早川 便秘になるのは、体質というより、食べる習慣ですね。朝食を抜かず、規則正しく食べ、食物繊維をしっかり摂ること。私は学生の時に、朝食と昼食を兼用で11時頃に食べ、野菜はフライものに添えられたキャベツだけという食生活を送っていたら便通が悪くなりましたが、実家に帰って母親の手作りの朝食を食べると、すぐに朝からトイレですっきり。毎日、家で里芋とか豆類などを煮て食べるといった食事を時間をかけて作って食べればいいのですが、それはなかなか難しい。現代人は食物繊維をサプリメントで補うことが避けられないのではないかと思います。

―お忙しいところをありがとうございました。


パトス Vol.72 2011.11.10発行
健康講座一覧へ戻る

オススメサイト