文字サイズを変える
小中大

健康講座

健康講座一覧へ戻る

中高年はミネラルバランスが崩れがち。
ミネラルが不足すると、体にさまざまな不調が現れる。

元気アップ講座(パトス vol 71)

ミネラルは体の機能の維持や調節に欠かせない栄養素です。カルシウムが不足すると骨がもろくなり、鉄が不足すると貧血になりやすい、マグネシウムが不足すると筋肉痛がひどくなるなど、ミネラルが不足すると、体にさまざまな不調が現れます。カルシウムとリンは協力しあって骨をつくる、ナトリウムとカリウムは拮抗して体内水分を調整し神経の伝達に関わるなど、ミネラルは他のミネラルとバランスよく摂ることが大事です。ミネラルバランスがとれていると、体の機能が正常に働き、健康を保つことができるのです。
ミネラルは体内で生成することができないので、日々の食生活から摂ることが必要です。高齢で食が細くなった人、メタボ対策で食事制限をしている人などは、ビタミン・ミネラルをバランスよく配合したサプリメントを活用するといいでしょう。

東北大学大学院教授
農学博士 駒井 三千夫 先生

高齢者は食が細くなり、薬の服用が多くなるので、
サプリメントでのミネラル補給が必要な場合があります。
必須ミネラルと主な働き

─ミネラルのことについて教えていただきたいのですが、英語でミネラルを直訳すると鉱物、つまり地殻の中に含まれる天然の無機質のこと。人体に鉱物が必要なのでしょうか。

駒井 人体を構成する元素の96.6%が酸素、炭素、水素、窒素。それらを「主要元素」と呼びます。残りの3.4%に当たる元素のことを栄養学では「ミネラル」と呼びます。人体に不可欠な必須ミネラルは16種類あり、そのうち厚生労働省によって13種類に摂取基準が明示されています。

―カルシウムは骨粗鬆症予防、カリウムは高血圧予防、マグネシウムは虚血性疾患予防など多量元素は健康維持に欠かせない栄養素として知られていますが、微量元素も必要なものなのですか。

駒井 微量元素は量はわずかでいいのですが、生命維持に必要なもの。多量元素よりマイナーな感じがするでしょうが、体への役割はメジャーなんですよ。


―駒井先生は味覚異常に関する研究をされていらっしゃいます。

駒井 亜鉛不足により味覚異常になることはよく知られていますよね。味覚異常の4〜5割近くの人が亜鉛不足が原因です。最近は検査キットがあって、耳鼻咽喉科で味覚異常の検査をすることができます。亜鉛不足による味覚異常は高齢者に多い。年をとると、腐敗したものの酸っぱさを感じなくなってしまったりね。その原因の一つは、高齢者は薬を服用している人が多いから。高血圧の薬や利尿剤など亜鉛とくっつくキレート薬剤が数十種類あり、そうした亜鉛キレート剤や亜鉛酵素阻害剤などのような薬が、味覚障害を引き起こすのです。年配の方は薬の弊害による亜鉛不足に気をつけたほうがいいでしょう。また、コンビニ病といわれますが、加工食品に入っている日持ちをよくするための食品添加物に亜鉛キレート作用があり、腸からの吸収を阻害する場合があります。つまり、保存のための添加物が入った食品を頻繁に食べていると、亜鉛を含むものを食べても亜鉛が腸を素通りしてしまう。亜鉛の吸収率がかなり悪くなってしまいます。亜鉛不足が原因の味覚異常は、亜鉛剤やサプリメントなどで亜鉛を補充することで数週間から1カ月ほどで治癒します。亜鉛は免疫機能の維持、皮膚の健康にも欠かせないミネラルです。過剰症の問題もあり、平均的な体重の健常者の場合、摂取量は成人男性が45mg以内、成人女性が35mg以内に制限されています。1日150mg以上摂取すると吐き気がし、300mg以上摂ると免疫機能が低下するといわれていますが、過剰症になるほど摂取することはまずないでしょう。

―そのほかに年をとって不足しがちになるミネラルは。

駒井 年配の人は体内セレン濃度も減ってきますね。セレンは過酸化物を分解する酵素の成分。過酸化物ができすぎると細胞に障害を与えるのですが、セレン含有酵素は過酸化物を処理してくれます。セレンの大切さがわかったのは、中国東北部に心筋障害を起こす人がとても多かったこと。その原因を調べていったところ、中国東北部の土壌にセレンが少なかったのです。セレン欠乏症により心筋障害が起こるということが明らかになりました。

グラフ・年齢階級別血色素量の低い者の比率

―微量でいい元素ですが、私たちの体にとても大切なものなのですね。

駒井 近年、微量元素は分子レベルで重要性がわかってきました。たとえば、鉄は赤血球のヘモグロビンの構成成分として必須なもの。欠乏すると、貧血を招くことはよく知られていますが、運動機能、認知機能などの低下も招きます。鉄は体内に3〜4g存在していて、そのうち70%は「機能鉄」と呼ばれる赤血球のヘモグロビンや筋肉のミオグロビン(タンパク質)の構成成分。あとの30%は「貯蔵鉄」として、肝臓や骨髄、膵臓、筋肉などにストックされていて、機能鉄が不足したとき利用されます。鉄を含む酵素はエネルギー代謝においても重要な働きをしています。


―ヨウ素は日本人の欠乏は少ないといわれますが。

駒井 ヨウ素は甲状腺に存在していて、甲状腺ホルモンを構成しています。ヨウ素を欠乏させた餌をネズミに与えた実験で、ヨウ素不足により甲状腺の機能が低下するという結果が出ています。魚介類や海藻類に多く含まれるミネラルなので日本人で欠乏の心配は少ないですね。ただし、偏食しがちな食生活の現代人は欠乏していることも。微量元素の一つマンガンは酵素反応に必須なもの。多くの酵素反応に関わっています。年をとってくると皮膚や関節などに多く含まれるコラーゲンの合成が効率良く行なわれなくなりますが、コラーゲン代謝にはマンガン、亜鉛、鉄、銅、マグネシウム、カルシウムなどが関わっています。

図・コラーゲン代謝と金属の関連性

―ミネラルはバランスよく摂取することが大切だと。

駒井 亜鉛を過剰摂取すると銅との拮抗作用により、銅が欠乏状態になり免疫能が低下することに。カルシウムを摂り過ぎると亜鉛は不足気味に。過ぎたるは及ばざるがごとしで、一つのミネラルだけを不足気味だからと大量に摂るのはよくないですね。また、ミネラル含有酵素の働きには、ビタミンが欠かせません。ミネラルを効率良く摂るには、B群ビタミンなどと一緒に摂ることが大切です。

―ミネラルをサプリメントで摂取する場合も、ビタミン、ミネラルをバランスよく配合したものを選ぶことが大切なのですね。野菜をしっかり摂っていれば、ミネラル不足にはならないでしょうか。

駒井 野菜だけだとミネラルは足りないですね。豚肉などの肉類が良い供給源です。

図・精白、精製におけるミネラル・微量元素の含有量

―ビタミン、ミネラルを摂るためには玄米がいいといわれますが。

駒井 確かに玄米は栄養的にはいいですが、硬くて食べにくいし、年をとると消化吸収が悪くなるので、うまく栄養素を吸収できないかもしれませんね。高齢になると食事を少しとっただけで膨満感を感じやすくなります。年配の方は食事から十分なビタミン、ミネラルを摂取するのが難しくなるので、サプリメントでの補充も必要となる場合があります。

―大変勉強になりました。お忙しいところをありがとうございました。

パトス Vol.71 2011.9.10発行
健康講座一覧へ戻る

オススメサイト