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魚の栄養素が、人間を救う!?生活習慣病予防の鍵は「EPA・DHA」

健康コラム(YL vol 04)

健康食品の中で、血液サラサラと言えば、魚の有効成分であるEPAとDHAに注目が集まっています。どちらもオメガ3系の不飽和脂肪酸で、厚生労働層の定める「日本人の食事摂取基準」の2010年版では、生活習慣病への効果が明記され、世界レベルの研究での有用なデータによりその実力が実証されている健康成分です。今回は、健康長寿への関心が集まる現代に、大きな注目を浴びるEPAとDHAについて、詳しく解説します。

魚離れが進む中、魚の栄養EPA・DHAが大人気

グラフ:魚介類の1人1日あたりの摂取量

日本が世界一の長寿国である理由は、魚や野菜を中心とした日本食にあると言われてきました。しかし昨今、食の欧米化により魚離れが進み、日本人の魚介類の摂取量は、大きく減少しています。特に若い人は「調理が面倒」「食べるのが面倒」「臭いが苦手」などの理由で、食卓に魚より肉料理が並ぶことが多いのが現状です。その一方で、「魚は体にいい」という概念は根強く、ここ数年で魚の有効成分EPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)のもつ疾病予防効果が明らかになると、魚のいいところだけを効率よく摂れるということで、一躍人気成分となりました。

EPAやDHAは主に魚の脂分に含まれている脂肪酸です。体内でつくることはできないため、魚を敬遠している方は自ずと、EPAやDHAが不足していることになります。また、魚を焼いたりして脂分が落ちてしまうと、魚を食べたとしても、上手く摂取できていない場合もあります。臭いや味も強いため、サプリメントでの摂取が現実的なようです。


それはイヌイットの調査から始まった
グラフ:血液中のEPA量比較

青魚の有用成分として知られるEPAの働きが注目されるようになったのは、1960年代にデンマークの臨床医学総合研究所に所属するダイベルグ博士たちの、グリーンランドに住むイヌイットの健康調査がきっかけでした。イヌイットの人々は北極圏で暮らすため野菜を食べることがほとんどなく、主食はアザラシの肉に偏りがちです。それにもかかわらず心臓病を患う人は少なく、健康な高齢者が多いことがわかりました。そこで研究調査が進められ、イヌイットの人々の血液中には魚やアザラシの脂肪に多く含まれるEPAやDHAなどのオメガ3系脂肪酸が多く含まれていることが判明しました。EPAの占める割合は牛肉や豚肉中心のデンマーク人の35倍も多かったのです。体内ではほとんど生成されないEPAが血液中に多く含まれていたのは、イヌイットが主食とするアザラシがイワシなどを食料としていたため、そのアザラシの肉からEPAをとっていたのです。

この発見以降、世界中の栄養学者がこぞってEPAを研究するようになり、とくに最近の10年では下記の通りさまざまな有用データが発表されています。


「EPAは体にいい」を実証する数々の学術データ

EPAの血小板凝縮抑制作用

心筋梗塞や脳梗塞を起こす大きな原因として動脈硬化があります。血管内の壁が厚くなり、血管の流れが悪くなります。そのことに加えて血管の盛り上がったところが非常に破れやすくなる、この破れやすくなっている部分をプラークと言います。プラークが不安定になり、血管が破れると血小板が凝縮し、一気に血栓ができ上がります。

EPAにはすぐにでも破れそうな不安定な状態のプラークを安定化させる作用があります。オメガ3系の脂肪酸であるEPAには強い血小板凝縮抑制作用があり、プラークで血栓が作られないようにしてくれているのです。

EPAの中性脂肪低下作用

食事で過剰に取った脂肪や糖質は、体内で中性脂肪になり、200〜300億個あると言われる脂肪細胞に脂肪球の形で蓄えられます。これが過剰に蓄えられたのが肥満であり、血中の中性脂肪も高くなります。そこで最近注目を集めているのがEPAを核としたオメガ3系の脂肪酸です。疫学的調査で、中性脂肪の高い人が適度にオメガ3系の脂肪酸を摂取すると中性脂肪値が著しく低下するという報告がなされています。実際に日本では高脂血症の患者の薬として合成されたEPA製剤が使われています。

EPAの心筋梗塞や脳梗塞の予防効果

グラフ:漁村と農村の主な成人病死亡率

千葉大学医学部の熊谷朗教授のグループは1980年から3年間にわたり、千葉県でEPAに関する疫学的調査を行いました。房総半島の海岸側に住む人と、山側に住む人の食事内容、血中のEPA濃度、病気の発症率を調べたところ、魚を食べる漁村地区(勝浦市)の人の方が、農村地区(柏市)の人より血中のEPA濃度が高いことがわかりました。漁村地区の人の1日のEPA摂取量は農村地区の約3倍で、農村地区に比べ動脈硬化が少なく、心筋梗塞や脳梗塞の発症率が少ないこともわかりました。


EPA・DHAの認知症予防効果

オメガ3系の脂肪酸が脳細胞に有効に働くことはよく知られている事実です。その有効性を実証する研究成果が最近になって日本でも島根大医学部の橋本道男准教授のグループから発表されました。島根県川本町に住む65歳以上の健常な高齢者108人を2つのグループに分け、一方にDHA850㎎、EPA200㎎を含む魚肉ソーセージを、もう一方のグループにはほとんど含まれていないソーセージを1年間、毎日摂取させました。図形を模写するテストや、決められたルールに沿って指を動かすテストを行ったところ、DHA・EPA入りを食べていたグループは成績が改善し、短期記憶や運動能力の機能低下が抑制されました。

EPAやDHAなどのオメガ3系脂肪酸は必須脂肪酸
脂肪酸の番号付け

飽和脂肪酸は動物の体内に多く存在する反面、不飽和脂肪酸は体内で生成できないので必須脂肪酸として重要視されています。とくにオメガ3系脂肪酸は摂取するのが難しく摂取量の期待値が設定されています。オメガ3とかオメガ6という脂肪酸の名前は、炭素間の二重結合の位置により命名されています。図のように炭素鎖のメチル基から数えて3番目の炭素=炭素に二重結合があればオメガ3系脂肪酸、6番目にあればオメガ6系脂肪酸となります。分子構造がよく似ているので、簡単に変換できるような気がしますが、それぞれ独立した栄養素で単独で摂取しなければなりません。それゆえ必須脂肪酸と呼ばれています。

オメガ3系脂肪酸が私たちの体にとって有用なのは、ひとつは体の調整物質の原料であり、もうひとつは細胞膜の構成物質だからです。

細胞膜は主としてオメガ3系脂肪酸、オメガ6系脂肪酸、オメガ9系脂肪酸によって構成されています。細胞膜が正常な脂肪酸で構成されていない場合、それぞれの細胞で機能に異常をきたし、体にさまざまな症状が現れます。

厚生労働省2010年版日本人の食事摂取基準においても、「オメガ3系脂肪酸は生体内では合成できず、欠乏すると皮膚炎などが発症する。さらに、オメガ3系脂肪酸は、血中中性脂肪の低下、不整脈流の発生防止、血管内非細胞の機能改善、血栓生成防止作用等いろいろな生理作用を介して生活習慣病の予防効果を示す」と記載されています。

脂肪酸の種類

もっと魚を食べよう、現代の日本人
脂肪酸の融点

さまざまな有効データが報告され続けているオメガ3系脂肪酸。どのように摂取したらいいのでしょうか。人の摂取する脂質は、大部分が脂肪酸とグリセリンで構成されていて、その性質や栄養は脂肪酸の種類で決まります。脂肪酸には飽和脂肪酸と、炭素と炭素の間に二重結合がある不飽和脂肪酸とがあります。さらに不飽和脂肪酸は二重結合が1箇所しかない1価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸とに分けられます。さらに多価不飽和脂肪酸は二重結合のある位置の違いでオメガ3系、オメガ6系、オメガ9系などに分類されます。飽和脂肪酸は融点が高く、不飽和脂肪酸は融点が低いのが特徴です。植物性油脂には不飽和脂肪酸が多く含まれており常温で液体となるものが多くなっています。動物性油脂の場合、飽和脂肪酸が多く牛や豚の脂質が個体となるのはそのためです。しかし同じ動物性油脂でも魚介類に多く含まれるオメガ3系の脂肪酸は融点が低く、魚油は常温で液体となります。常温でも液体であることが、オメガ3系脂肪酸を含むサプリメントをサラサラサプリメントと呼ぶひとつの理由です。

図でもわかるように、オメガ3系脂肪酸を摂取するには魚を食べるのがもっとも手早い方法です。その他、エゴマ油や紫蘇油、亜麻仁油などの植物系の油にも少し入っていますが、普通の食事で摂取するのはなかなか難しいものがあります。とくに最近では、洋食化の傾向により日本人でも魚介類の摂取量の減少が続いており、サプリメントでのオメガ3系脂肪酸の摂取をおすすめします。

食事摂取基準ではオメガ3系脂肪酸の目安量や目標量を設定するとともに、別途EPAとDHAに関して望ましい摂取量を規定しています。

魚介類の可食部100gに含まれるEPA量・望ましいEPA及びDHAの摂取量

YL Vol.04 2010.8.5発行
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