健康講座
めざそう肥満解消
糖尿病、高脂血症、高血圧や動脈硬化…。肥満は、さまざまな生活習慣病を引き起こします。その主な原因となるのが、遺伝的因子とともに食生活の誤りと運動不足という2つの生活習慣因子。いわば肥満は、生活習慣病を引き起こす最大の誘因といえます。ですから肥満を予防・改善することは、単に体重が減ったり、外観がスマートになるだけでなく、生活習慣病の予防・改善に重要な役割をはたします。もっと元気な毎日に向けて、肥満解消に取り組んでみませんか。
- 取材協力・監修
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医学博士 井上 修二 先生
- 日本肥満学会理事長
- 共立女子大学家政学部教授
- 聖マリアンナ医科大学客員教授
- 昭和大学医学部客員教授
- 国立健康・栄養研究所客員研究員
生活習慣病にかかりやすくなるのが肥満。
- 「過剰な体重」ではなく「過剰な体脂肪の蓄積」が肥満
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肥満とは、「体脂肪が過剰に蓄積された状態」のことです。単に体重が過剰ということではありません。通常、人の身体は、毎日の生活を維持するのに必要な※活性組織82%と、飢餓や空腹時に備えて貯蔵されたエネルギーである体脂肪18%で構成されていますが、このうち体脂肪の割合が男性で25%、女性で30%を超えると肥満ということになります。
そのため、肥満を正しく判定するためには、体脂肪を測る必要があります。しかし体脂肪を測定するうえで、正確・簡便・経済的という3つを兼ね備えた方法はいまのところありません。近年普及してきた家庭用の体脂肪計は、汗をかいた後の水分減少や運動後の体温が上昇したときなど測定する条件によって値が変動するため、学問的にはまだ認められていません。
そこで現在、肥満の判定は、体脂肪をもっとも反映しているとの理由から、「ボディマス指数」(BMI)が国際的に用いられています。この値(指数)によって肥満の判定を行います(BMI計算式参照)。
※活性組織とは水分、骨や筋肉、内臓、神経などのこと。水分60%、たんぱく質17%、灰分5%で構成される。
- 生活習慣病を併発しやすくなる状態を肥満と判定
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日本では、日本肥満学会の判定基準により、BMI25以上が「肥満」となります。この値は、肥満と生活習慣病の合併率との関わりを調べた実態調査に基づいています。
生活習慣病の合併率は、BMI22近辺でもっとも少なくなります。このときの危険率を1とすると、合併の危険率が2倍になるBMIは、高血圧で25、糖尿病で27など、25~29の領域になることが、先の調査で明らかになりました。このことから、合併症がより併発しやすくなる領域=BMI25以上を「肥満」と判定することになったわけです。言い換えると、肥満と判定されるBMI25以上は、生活習慣病を併発しやすい状態ということができます。
BMI25以上の日本人は、厚生省(現厚生労働省)の調査によると、男性約23%、女性約22%に達します。つまり成人の5人に1人が肥満に該当します。さらに40~60代では3人に1人と、肥満の割合は高まります。
ちなみに欧米では、BMI30以上を肥満としています。しかし日本人の場合、BMI30以上の人は男女とも3%以下しかいません。このことから欧米人に比べて軽度の肥満であっても、日本人は生活習慣病を併発しやすいといえるのです。
- 生活習慣病合併の危険は体脂肪の分布にも関連する
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肥満によって生活習慣病が併発する危険は、ここまで述べた肥満の程度に加えて、体脂肪の分布も関係してきます。
肥満は体脂肪が蓄積された部位に応じて、主にお腹から上に脂肪がつく「上半身肥満」と、主にお尻から下に脂肪のつく「下半身肥満」に分けられます。前者は男性型肥満・リンゴ型肥満、後者は女性型肥満・洋ナシ型肥満とも呼ばれますが、上半身肥満のほうが生活習慣病の合併の危険が高いことがわかっています。
さらに上半身肥満は、胸部CTスキャン検査により「皮下脂肪型肥満」と「内臓脂肪型肥満」に分けられ、内臓脂肪型肥満のほうが生活習慣病を併発しやすくなります。
さまざまな生活習慣病を併発
- 代表的な合併症は糖尿病、高脂血症、高血圧
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では、肥満によってどのような生活習慣病にかかりやすくなるのでしょうか。肥満はさまざまな生活習慣病と深く関わっていますが、なかでも代表的なのが糖尿病、高脂血症、高血圧です。さらにそこから心筋梗塞、脳梗塞などの動脈硬化症が引き起こされます。
糖尿病
糖尿病は、インスリン分泌が少なくなる1型糖尿病と、インスリンはある程度分泌されるのに血糖降下作用が弱くなる2型糖尿病に分けられる。このうち肥満に合併するのは2型糖尿病。肥満のためにインスリンの働きが弱まり、血糖調整がうまくいかずに血糖値が上昇。これが原因で糖尿病を引き起こす。
高脂血症
肥満になるとインスリンの効き目が悪くなり、これをカバーしようとさらにインスリンが分泌され、血液内は高インスリン状態に(高インスリン血症という)。こうなると肝臓で中脂肪の合成が促進され、血中の中性脂肪も高まっていく。中性脂肪が肝臓にたまると脂肪肝になる。一方、コレステロールが多すぎると、血管に付着して動脈硬化の原因となる。
高血圧
肥満による高インスリン血症で、腎臓からのナトリウムの排出作用が低下。体内にナトリウムが蓄積され、血液量が増えて血管がパンパンに張ったような状態に。そして血圧が上昇する。
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これらの疾患は、糖尿病で6割、高脂血症、高血圧でそれぞれ3割程度が肥満に関係しています。つまり、大まかにいえば、肥満を解消することで生活習慣病全体の3割から4割が改善できるわけです。このことから、肥満が生活習慣病の最大の危険因子であることがわかるでしょう。
生活習慣病の誘因としてだけでなく、肥満自体が生活習慣病とみなされる肥満症もあります。BMI25以上で、1.肥満に合併しやすい生活習慣病をすでに合併している(表参照) 2.上半身肥満が疑われ、腹部CTスキャンで内臓脂肪型肥満が確認できる、のいずれかが認められた場合に肥満症と診断され、医療の対象となります。
誤った食生活と運動不足の改善へ
- 脂質の摂取と運動不足が太りやすい体質をつくる
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肥満の主な原因は、誤った食生活と運動不足です。誤った食生活とは食べすぎが主なものですが、早食いや偏食などの誤った摂食パターンも含まれています。
通常、私たちは1日平均約2000キロカロリーを摂取しています。この値は、実は戦後ほとんど変化していません。それなのに肥満は、3~5倍も増えています。
その大きな理由の1つが、食生活の欧米化で、体脂肪として蓄積されやすい脂質―とくに動物性脂質の摂取が増加したことにあります。たんぱく質や炭水化物は、貯蔵エネルギーになるために体内で脂肪に変換する必要がありますが、脂肪はそのまま体内の脂肪になるため、脂肪を多く摂ると太りやすくなります。
一方、運動不足は、運動による消費エネルギーを減らすだけでなく、エネルギーが蓄積しやすいような代謝状態に身体を変えてしまいます。つまり、運動不足になると、血糖を下げるインスリンの働きが弱くなってインスリンの分泌が増え、それが脂肪の合成を促すわけです。さらに、※基礎代謝量も減少。脂肪がますますたまりやすい体質になってしまいます。
※活性組織を維持するのに必要な最低エネルギー量
- 食事療法と運動療法の“併用”が肥満治療の基本
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そのため肥満の治療は、食事療法と運動療法が基本となります。しかもこの2つを同時に併用することが重要です。どちらか一方が欠けても、治療は成功しません。
食事療法だけによる減量を始めた場合、1~2カ月後に、体重がなかなか減らない時期がやってきます。「適応」と呼ばれる現象ですが、主因は基礎代謝の低下です。これを克服するために運動療法を併用します。これにより、運動による消費エネルギーを増加させることに加えて、運動を継続することで太りやすい代謝異常を是正し、食事療法の効果を高めることができるわけです。
体重の5%の減量がまず目標
- 目安は1カ月で1~2㎏無理のない計画がポイント
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欧米には肥満に伴う生活習慣病は、体重の5%の減量で改善されるというデータがあります。60㎏の人なら3㎏、80㎏の人なら4㎏。これなら決して難しい数値ではないでしょう。
そこでまず、減量目標を5%に設定しましょう。減量の目安は、1カ月で1~2㎏。目標の5%へ、次いでBMI25未満の普通体重へと、無理をせず少しずつチャレンジしてください。
食事療法では、1日の摂取カロリーを1600キロカロリー程度のあまり強くない食事制限とします。運動療法では消費カロリーの目標を1日300キロカロリーに。ただし運動は30分や1時間まとめてする必要はありません。朝の散歩から通勤、買物や家事まで、こまめに身体を動かし、合計で300キロカロリーになればいいわけです。
誤解してはいけないのが、汗をかく、水分摂取を制限する、宿便を取り除くといったことは、単に一時的に体重が減るだけで、肥満治療の減量にはなりません。むしろ健康を害するおそれすらあります。あくまでも体脂肪を減らすことが目標であり、その実現なくして生活習慣病の予防にもつながらないことを、シッカリ念頭におきましょう。
- 特定保健用食品をうまく利用することも考える
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いま話題の特定保健用食品は、生活習慣病の一次予防に役立つ安全な食品として厚生労働省が認可したものです。糖尿病の予防では、食後の血糖値の上昇をコントロールしてくれる便利なものがあります。
たとえば、小麦の中に含まれている天然成分「小麦アルブミン」は食事とともに摂取すると食後の血糖値の上昇をおだやかにすることにより、過度のインスリンの分泌を抑え、すい臓の疲労を軽減します。食品摂取による、食後の血糖上昇の程度をグリセミックインデックスといいますが、ちょうどグリセミックインデックスの低い食品をとるのと同じような効果が得られるわけです。
このような便利な天然成分を含んだ特定保健用食品を賢く利用する方法もあります。使用に際しては、かかりつけの医師や特定保健用食品を製造しているメーカーに問い合わせてみるとよいでしょう。
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